色々お話置き場

ドラクエ10、ゼルダ、ポケモン

とある天才占い師の苦悩

ドラゴンクエストXのお話。
※ネタバレはありません。

昔々、とは言えない
わりと最近のお話。
あるところに
当たると評判の占い師がいました。

その占い師に占ってもらうと
今日のラッキーカラーのような些細なものから
探し物や将来への不安、恋愛の悩みなどを
ズバッと言い当て見事解決へ導くのだそうです。

ある日、噂を聞きつけた迷えるエルフの少女が
占い師のもとを訪れました。

「今度、大事な試験があるんです。
教科書を暗記するほど勉強したのに
試験の日が近付くにつれ
不合格になる悪夢にうなされるように
なりました。
私はどうしても受からなければ
いけないんです!
父が病気になって働けなくなってしまって
母だけでは生活費や父の治療費が
賄えないんです。
試験に合格し早く一人前に
ならなければなりません。
どうか助けて下さい!
お願いします!」

「なるほど。お名前を伺ってもよろしいですか?」

「ああ、失礼しました。シラフジと申します」

「シラフジさん、ですね。では占ってみましょう。少々お待ち下さい」

占い師は水晶に両手をかざし魔力を送った。水晶がうっすら青い光を帯び、それが段々強く白い光へと変わる。何かが水晶に映されているようだがシラフジには分からなかった。占い師が水晶へさらに魔力を送るとカサカサカサっという音が聴こえ、続いて女性の悲鳴が聴こえた。

「ひっ」

シラフジは悲鳴に驚き後退りをした。
占い師はしばらく水晶を覗きながら考え込んでいるようだった。
魔力が途絶え水晶は緩やかに沈黙した。
占い師はシラフジの目を見つめ結果を伝えた。

「実技の試験中にあなたの大嫌いな蜘蛛が
突然現れる、と占いの結果が出ました。
たとえ現れても、落ち着いて試験を
続行出来れば合格出来る事でしょう」

「先程の悲鳴はもしかして私の……?未来が視えるのですか!?占い師様、あなたのお名前を教えて下さい!」

「ソレロでございます」

「ソレロ様!ありがとうございました!」

占い小屋を出ていくシラフジの小さな背を見送り、ソレロは呟いた。

「名前……訊かれたの、初めてですね……」

数週間後、シラフジは再びソレロの元を訪れた。

「あの……ッ!ソレロ様の仰った通り!試験中に蜘蛛が出たんですよ!!私、ほんと〜にほんと〜に蜘蛛が苦手で!ソレロ様から聞いてなかったら試験会場からキメラのつばさを使って逃げ出してしまっていたかもしれません。そうなれば間違いなく不合格になっていたでしょう。本当に……ありがとうございました!!ソレロ様のお陰で無事に試験に合格出来ました!」

その後もシラフジは度々ソレロの占い小屋へやって来た。心配事を占って貰ったり、結果を報告し感謝を伝えに来たり。

次第にソレロにとある気持ちが芽生えていた。
ソレロは気付いた。
ソレロはシラフジに恋をしていた。
ソレロの事を疑わず、真っ直ぐな心でソレロの占いの結果を受け取り、そして感謝をしてくれるシラフジというエルフの少女にソレロはいつしか惹かれていたのだった。

ある日、シラフジが恋愛について
占って欲しいと言った。

ソレロは
「あなたの運命の相手は私であり、
私と結ばれれば幸せになれるでしょう」
と言おうとしてやめた。

自分に陶酔しているシラフジの事だから
こんな胡散臭い嘘をついても
きっと信じてしまう。

ソレロは立ち上がって背を向け

「今日は具合が悪いのでまた今度いらして下さい」

と言い、その後二度と姿を見せなかったという。