色々お話置き場

ドラクエ10、ゼルダ、ポケモン

ポケモンスリープ「返事はッ!?」

「フレンド?」

「レポートを博士に送った時にフレンドにもポケモンの寝顔の写真と飴が送られるんだぜ。親密度ってのもあってそれが高くなるとアイテムが貰えたりとか。この先のアップデートで色々他にもお得になるって噂もある。みずき、オレとフレンドになろうぜ!」

 よし君と私が……フ、フレンド!?

「嫌なのか!?でもマジ良い事しかねえから!悪い事なんにもねえから!」

「嫌じゃないよ!い、良いよ」

「よっしゃーッ!!!じゃあほらここにリサーチャーコードってのがあるから……」

 こうしてみっちゃんとよし君はフレンドになった。

 

※ ※ ※

 

「これで良し、と」

 みっちゃんはゼニガメの写真と共に博士へレポートを送った。これで同時によし君の元にもゼニガメの写真とゼニガメの飴が届いてる……はずだ。

 みっちゃんが調べた所、送る飴は人気のポケモンのものにした方が喜ばれるらしく、なるべく御三家と呼ばれるポケモンピカチュウなどにした方が良いようだ。

 逆にウソハチは駄目らしい。どこかで大量発生しているので疎ましがられているのだとか。みっちゃんはまだその現場で調査をした事が無いのでよく分からないが。

 これが「正解」のはずだけど、よし君からは写真と飴が滅多に来ないから「答え合わせ」が出来ずにいた。

 よし君からはフレンド登録した5日後にオコリザルの写真とマンキーの飴が届いて、その2日後にマンキーの写真と飴が届いた。

 それからまた数週間空いてエーフィ、その4日後にガルーラ。

 その後数カ月後にアップデートで新しいポケモンが追加された頃にスターミー。その翌日にキャタピーの写真と飴が届いた。

 そして。

「今日はダグトリオ……」

 エーフィはイーブイの飴だから喜ばれるけどそれ以外は……。よし君はあまり気にしないで送ってるのかな?それとも私が知らない攻略情報なの……?それに何でこんなに稀にしか送って来ないの?何かすごい厳選しててウソハチにしか遭遇しなくて悪いから送らないとか?そんな事ある?数カ月もずっと?それかもう調査飽きちゃったとか?

ニャース……分かんないよ。私、また間違えてるのかな」

 憂鬱そうな顔でみっちゃんはニャースを抱っこした。

 そう、よし君とフレンドになってからレポートを送る度、そしてよし君から写真と飴が届く度みっちゃんはこういう顔になる。それも日に日に憂いが濃くなっているような気がする。

 「にゃあん……」

 ニャースはご主人様を元気づけてあげたかったけれど、恐らくそれはあの人にしか出来ない事なのだ。

 

 それから1週間後。

 「あの人」がみっちゃんのテントにやって来た。

「おい、みずき!返事はッ!?」

 怒ったような顔でよし君がみっちゃんを睨んでいる。

 「え!?何?何の?!」

「オレからの写真と飴、7つ届いただろ!?まさか、気付かなかったのか!?」

「届いたけど……本当に何!?ごめん、本当に私分かんないよ」

 よし君の責めるような言葉と態度にみっちゃんは訳も分からず泣きそうになっている。

「うわ、泣くな!クソッ、じゃあ説明するからオレの写真貸せ!」

 みっちゃんから写真を受け取るとよし君は1枚写真を指差した。

「こいつは何?」

オコリザル……?」

「だろ!?じゃあこいつは?」

 よし君は別の写真を指差す。

マンキー?」

 よし君は頷いた。

「こいつは?」

「エーフィ?」

「そう!こいつの写真撮るの超大変だったんだぞ!!……次」

「ガルーラ」

「次」

「スターミー」

「こいつなんかアップデートで新しいポケモンが追加されるのを何カ月も待ったんだぜ!次!」

キャタピー

「最後」

ダグトリオ

「……で?」

「で?」

「オレに言う事は?」

「?????」

「まだ分かんないの!?鈍い!あ〜もう、今の順番でポケモンの頭の文字繋げて読め!」

「オ、マ、エ、ガ、ス、キャ、ダ」

キャタピーはキだ!!」

「オ、マ、エ、ガ、ス、キ、ダ。お前が好きだッ!?!?!?はっ?え?」

「みずきの事が好きだって言ってんの!で?お前はどうなん!?」

「私!?私は好きです…………。よし君の事が好きです…………」

「なんで泣くんだよお!?」

「よし君の馬鹿っ」

「好きな奴に馬鹿って言う!?お前本当にオレの事好きなん?お前訳分かんねえ」

「よし君はっ!女の子の事全ッ然分かってない。もっと勉強して!」

「はあ〜〜〜?や、分かった、分かったから、勉強するからもう泣くなよー!!」

 

 テントの陰から2人の成り行きを見守っていたみっちゃんのニャースとよし君のカメックスは安堵の溜息をついた。

「本当にエーフィの写真を撮るのは諦めかけたし、『ス』のポケモンがいないから開発宛に手紙まで書いてお願いしたんだ」

「みっちゃんはまたよしくんにまちがってるっていわれたらどうしようってずっとふあんそうにしていたにゃ」

「…………」

 ニャースカメックスはしばし見つめ合った。

「俺達で主同士の情報交換しないか?」

「いいあんだにゃ」

 

 

 

 

ポケモンスリープ「ぼくのだいすきなみっちゃんとみっちゃんの可愛いニャース」

「ZZZ……ZZZ……」

 カビゴンの大きなお腹が気持ち良さそうに上下している。そんなカビゴンに眠気を誘われて側でニャースが眠っていた。

 パシャッ!という音と共に一瞬辺りが眩しく光る。

 ニャースはびっくりして飛び起きた。

「起こしちゃってごめんね。可愛かったから写真撮っちゃった」

 ニャースの目の前には人間の小さい女の子がいた。10歳くらいだろうか。手元の赤い小さな板状の物を見つめている。

「あなた、ニャースっていうのね。私はみっちゃん。よろしくね」

 そういうとみっちゃんはニャースモンスターボールがアイシングで描かれているビスケットを渡した。

 ニャースは初めて見るビスケットをすんすんすんと鼻で嗅いでから口にしてみた。

 ザクザク。ボリボリ。にゃんだかわからにゃいがおいしいにゃ。

「美味しい?もっといる?ほら」

 ニャースはみっちゃんから渡されたビスケットを全部平らげた。

「うちの子になったらもっと美味しいもの毎日食べられるよ。一緒に来る?」

 みっちゃんは笑顔で言った。

「ごろなァん」

 ニャースはみっちゃんの足にすりすりした。

「決まりね!」

 実はみっちゃんにとってニャースが初めて仲間になったポケモンだった。

「こんな可愛い子がお友達になってくれて嬉しいな!」

 それからというもの、みっちゃんはニャースをどこへ行くにも一緒に連れて行った。他にも新しく仲間のポケモンは増えていったがみっちゃんは初めて仲間になってくれたニャースをとても可愛いがった。ニャースも大好きなみっちゃんの為に一生懸命きのみや食材を集めてお手伝いをした。

 ポケモンに人間の言葉がどれほど理解出来ているのかは分からなかったけれど、みっちゃんはニャースにおうちの家族の話や学校の話を沢山した。

「今日のお洋服ね、算数のテストが良い点だったからママがご褒美に買ってくれたの!」

「にゃ〜」

「昨日ね、パパがお疲れ様だったから肩たたきしてあげたらパパね、『みっちゃんは肩たたきの天才だね!』って褒めてくれたの!今度ニャースにもやってあげるね!」

「みゃおう」

「あのね、みっちゃん、好きな人いるの!よし君っていうの。ニャース、内緒だよ!」

「にゃにゃ!」

ニャースはニンジン食べられる?みっちゃん食べられないの。だからこの間残したやつ庭に埋めちゃった」

「なーうー」

 ニャースは算数とかテストとかよく分からなかったけれど、楽しそうに話すみっちゃんを見ていると自分も楽しい気持ちになった。

ニャース、いつも沢山お手伝いしてくれてありがとね。ニャースはみっちゃんの可愛いニャース!大好き!」

「にゃ!にゃにゃ!」

 ぼくはみっちゃんのかわいいニャース!ぼくもみっちゃんだいすきだにゃ!

 そんなある日の事。いつものように寝顔図鑑集めを頑張るみっちゃんのお手伝いをニャースがしていた時の事。

「おい、みずきじゃん。みずきも寝顔図鑑集めやってんの?」

「よ、よし君!そ、そうだよ」

 みずき、と呼んできた同い年くらいの男の子にみっちゃんがうわずった声で返事をした。

 みっちゃんにはいろいろにゃまえがあるのかにゃ?……よしくんってどこかできいたきがするにゃ。

「オレもやってる!みずきはどれくらい集めた?」

「始めたばかりだよ。まだ全然」

「そうなん?見てよオレのカメックス。食材集めが得意で性格が冷静だから食材お手伝い確率が高くておまけに金スキルで食材確率アップがついてんだぜ!最強だろ!?」

「ごめん性格とか金スキル?とか初めて知った。えっと、すごいねよし君」

「なあんだ分かんねえのかよ。じゃあオレが見てやるよ。みずきが連れてんのはニャースか。ええとこいつは……。え!スキルが得意なのに性格が無邪気でスキル確率ダウンじゃん。金スキル1個も持ってないし。クソださ。カスじゃん役立たずだよこいつ。早く博士に送っちゃえよ」

「えっ……」

「しかも手持ちで一番こいつがレベル高いの?飴とゆめのかけらの無駄遣いだな。みずき、もっとポケモンの事調べた方がいいぜ?じゃあな」

「……」

 いちどにいっぱいいわれておいつけなかったけど、ぼくのことはにゃしてたにゃ?

 みっちゃんの背中が震えていた。

「にゃーん」

 どうしたにゃ?ニャースはみっちゃんの手をなめた。

「触らないで」

 みっちゃんはなめられた手をバッと払い除けた。

ニャースのせいで、よし君にダサいって言われた!ニャースなんかどっか行って!」

 にゃ!?にゃ!?にゃ!?

「どっか行け!!」

 動かないニャースにみっちゃんは石を投げて叫んだ。

 石はニャースの右目の上に当たった。傷から血が流れたが痛みは感じなかった。あまりにも胸が苦しかったから。

「あっ……」

 みっちゃんは取り返しのつかない事をしてしまったと気付いたけれど、ニャースはもう背を向けて走り去ってしまった。

 

 ※ ※ ※

 

「ハッ、ハッ、ハッ、」

 ガッ。ベシャッ。ニャースはつまずいて地面に突っ伏した。もう先程の傷が分からなくなるくらい体中が傷だらけになった。

 ニャースはスンと鼻を鳴らした。

 むずかしくてわからなかったけど、ぼくがだめだから、みっちゃんはみっちゃんのすきなひと、よしくんからみっちゃんはだめだっていわれてしまったにゃ。だからきっとみっちゃんはぼくともういっしょにいたくにゃいのにゃ……。でもぼく、またみっちゃんのかわいいニャースにもどりたいにゃ。

 いつもならもうみっちゃんと一緒に眠っている頃だ。しかし帰る場所を失ったニャースは森へ向かった……。

 

※ ※ ※

 

 みっちゃんはポケモンについて猛勉強を始めた。ポケモンの得意な物、性格、スキル、カビゴンの好きなきのみ……。

 手持ちのポケモンも今までみたいに見た目の可愛さとかで決めないでカビゴンの好きなきのみや料理に合わせて組むようにした。

 ……でも、なんか、つまんないな……。

「わあ、あなたのカビゴン、とっても成長早いですね。何か特別な事してるんですか?」

 ある日、通りすがりの人に訊かれた。

「今週のカビゴンに合わせてベストのメンバーを揃えてるの」

「そうなんですか」

 通りすがりの人は呟いた。

「……それだけにしては早過ぎる」

「え?」

 

※ ※ ※

 

 ニャースは寝る間を惜しんできのみを集めていた。

 みっちゃんのかわいいニャースにもどりたかったらすごいニャースににゃるしかにゃいにゃ。

 ニャースは沢山きのみを集めたが、今週のカビゴンの好きなきのみはオレンのみで、ニャースの集めたキーのみではなかった。

 ぼくはたかいところによくあるキーのみをあつめるのはとくいだけど、およげにゃいからみずべによくあるオレンのみをあつめるのはにがてだにゃ。でも……そんにゃこといってるばあいじゃにゃいにゃ。

 ニャースは崖に登りオレンのみを探した。オレンのみは川の中州の木になっていた。ニャースはごくりとつばを飲んだ。

 だいじょうぶ、かわはあさいしにゃがれもゆるやかにゃ。

 意を決してニャースは川へ足を踏み出した。冷たくてびっくりして足を戻す。

 だめにゃ!いくのにゃ!

 なんとか中州に辿り着いて木になったオレンのみを採り、来た道を戻る。だが先程とは違いオレンのみの分体が重くなり川の中でバランスを崩した。浅めの川ではあったが元々水に慣れていないニャースだ、パニックになってしまっては水の中では上と下も分からなくなる。ニャースは溺れてしまった。

 くるし……いにゃ。ああ、もうだめだにゃ。みっちゃんのかわいいニャースにももどれにゃいし、これで、おわりだにゃ。かみさま、どうかこんどうまれかわるときにはみっちゃんのかわいいニャースでいられるようにゃすごいニャースに……してくだ……。

 ニャースの意識が薄れていく。

「おい大丈夫か!?」

 気が付くと川辺に横たわっていた。

ニャースのくせに何やってるんだ!?ニャースが泳げる訳ないだろう!」

「こん、しゅうのカビゴンは、オレンのみが、すき、だから……」

「そんなの他の奴に任せれば良いだろう!ん?お前はよし様の同級生のみずきとかいう奴のニャースか?」

「?」

「俺はあの時よし様といたカメックスだ。お前、博士送りにならなかったのか」

「すて……られ、た、にゃ」

「そうか……。すまない。よし様のせいで……。よし様は向上心が強くご自身に厳しいのだが、他人にもそれを強要してしまう悪い癖があってな……。きっとよし様もいつか気付いてくれるはずだ、もっと大切なものに。お前は充分すごいニャースだよ」

 ニャースは弱々しく首を横に振った。

「よし様には俺から言っておく。お前もっと自分を大事にしろよ。例えどんなに大切なご主人様がいてもそんなボロボロの体じゃ何も出来ないぞ。分かったか?それじゃあまたな」

 カメックスは持っていたモーモーミルクをニャースの前に置くと川へ戻って行った。

 ニャースはそのまま泥のように眠り、寝起きにカメックスがくれたモーモーミルクを飲み、みっちゃんのテントへ向かった。集めたキーのみとオレンのみをこっそりカビゴンの側の木箱に入れる。

「……ニャース

 掛けられた声に飛び上がる。何故ならみっちゃんの声だったからだ。

 また、いしにゃげられるかもしれにゃいにゃ……。

 怯えるニャースの体はふわりと抱え上げられた。

「ごめんね。どっか行けって言ってごめんね。石投げてごめんね。追い出されてからもお手伝いしてくれてたんでしょ?気付かなくてごめんね」

「にゃぁ」

「ごめんね……。ニャースはみっちゃんの可愛いニャースだよ……」

「ぷにゃぁー」

 ニャースはみっちゃんの腕の中で目を閉じた。

「おい、みずき」

「よし君?」

 よし君とカメックスがいた。

「みずきのニャース、すごいんだってな。みずきの為に川渡ってオレンのみ集めたんだってよ。みずき、お前すごいよ!ポケモンが主の為にそこまでするなんて、お前にはポケモンと仲良くなれるすごい才能があるんじゃねえのか!?」

ニャースが川を!?」

「この前は勝手な事言って悪かった。そのニャース、大事にしてやれよ。みずきみたいなすごい奴にはポケモンの生まれつきのステータスなんか関係なく活躍させられるんだな。そんじゃ、お互いこれからも頑張ろうぜ!またな!」

「う、うん。またね!」

 カメックスはお辞儀をするとよし君の後ろへ急いで戻って行った。

ニャース……戻って来てくれてありがとう」

「ゴロゴロゴロ……」

 ニャースは喉を鳴らした。

 

         ○おしまい○

 

 

 

 

 

 

 

デスマスターと死神の子

ご機嫌よう 名も知らぬ人
私は デスマスター
彷徨う魂を 在るべき場所へ 導く者
さあ あなたの未練を 私に聞かせてご覧

 ※ ※ ※

赤髪のデスマスター、アメリヤは冒険者から
依頼を受けトポルの村へやって来た。

トポルの村の近くの人喰い草の所に彷徨う
霊魂がいるので成仏させてあげて欲しい、と。

アメリヤがトポルの村を出、ガウシア樹海を
左に少し歩くとどっしりと鎮座する
人喰い草の中に白骨化した屍が
横たわっていた。

アメリヤはしゃがんで屍の頭蓋骨を膝にのせ
側に漂う霊魂に語りかけた。

「ご機嫌よう 名も知らぬ人
私は デスマスター
彷徨う魂を 在るべき場所へ 導く者
さあ あなたの未練を 私に聞かせてご覧」

霊魂は生きている人間に話しかけられ
戸惑いながらも返事をした。

「この私の話を聞いて下さるのですか?
……私にはとある書を処分するという重要な任務
がありました。とても頑丈な為普通の方法では
処分出来ず、魔術に精通している魔界の高名な
術師を訪ねて回っていました。
しかしある日賊に襲われ私は致命傷を負い
書も奪われてしまったのです。
あの書は存在してはならない大変
恐ろしいもの。
あの書を処分するまでは私はこの世界から
去る事が出来ません」

今まで数十の霊魂をあの世へ導いてきた
アメリヤだったが話を聞いて流石に尻込み
してしまった。

これは私の手に余る案件かもしれない。
本部に応援を頼もう。
アメリヤは使い魔に手紙を持たせて
デスマスター協会の本部へ送った。

「ああ、そういえばまだ名前すら申し上げて
ませんでしたね。失礼しました。私は
クルコス村のバーンと申します」

え……?クルコス村……?バーン……?

「マリナという妻がいたのですが
危険な任務の為、村に残してきたのです。
その事も気掛かりです。
もう10年以上経ってしまったでしょうか……」

マリナ……!?

ドクン、という大きな音が自分の体から
聞こえた気がした。

「父さん!?あなたは父さんですか!?」

「え?!いや、私には子どもはいませんよ」

「母さんは、父さんが心配しないように
身籠っている事を黙ったまま見送ったと
言っていました」

「まさかそんな!……でも確かに君の髪の色は
マリナと同じ赤色だ。眼鏡を、眼鏡を外して
くれないか?」

アメリヤはバーンの言葉に従い分厚い
瓶底眼鏡を外した。

「ああ!マリナだ!マリナと瓜二つの顔だ!
まさか本当に俺の娘なのか?!な、名前は
なんていうんだ」

アメリヤです」

「ああ……間違いない。俺達の子の名前だ。
旅立つ少し前にマリナに訊かれたんだ。
もし子どもが出来たらなんて名前に
したいかって。男女両方訊かれて。
俺は女の子ならアメリヤだと。これは俺と
マリナしか知らないはずだ」

「ではあなたは私の父さんなのですね。
今までずっと、探していました。出来る事なら
生きてる内に会いたかったですが……。でも
逢えて良かった」

「マリナは……、君のお母さんは元気かい?」

バーンのその質問にアメリヤは目を伏せた。

「母さんは……。数年前に亡くなりました」

「そう、か……」

「私はその日、デスマスターの修行で家に
いなかったのですが、何者かが家にいた
母さんを襲ったそうです……」

「なっ……」

「何も盗られた物は無く、犯人の目的は今も
不明なままです」

「くっ……まさか!?」

重い空気の2人のもとにオーガの青年が
駆け寄ってきた。

「おーいアメリヤ!どうした?何に
手こずってんだ?成績優秀のアメリヤさまに
しちゃ珍しいじゃねえか」

「あっ……」

「ん?この霊魂からは特に敵意も
感じられねえな。なんだまさか聖水を忘れた
とかそんな理由で応援呼んだのか?ほらよっ」

青年はバーンの霊魂へ聖水を振りかけた。

「うっ……ぐっ……」

バーンが苦しそうに呻く。

「待ってフーガ!!送らないで!この人は私の
父さんなの!!」

祈りの仕草をしようとするフーガを止める
アメリヤ。

「ハァ!?何言ってんだ!?父親だろーと
母親だろーとこの世に留まり続ける霊魂は
ほっときゃ悪霊になっちまうぜ!?知らねー訳
じゃねーよな?!」

「父さんにま、まだ訊きたい事があるの!」

アメリヤは鎌の刃をフーガの首もとに当てた。

「オイ!てめえ!自分が何やってんのか
分かってんのか!?霊魂送りの邪魔は
重大な規則違反だぞ!下手すりゃ証を
取り上げられ協会から追放されっぞ!」

アメリヤ!やめなさい!私ならもう
逝ってもいい!」

アメリヤは縦長の紫色の宝石のペンダントを
バーンに向かってかざした。
なんとバーンの霊魂はペンダントに
吸い込まれてしまった。

「死霊召喚!いでよ、ゴースト!」

アメリヤはゴーストを2匹召喚し攻撃対象を
フーガと指示するとルーラストーンで
その場から逃げ出した。

「待てよおいっ!クソッ!!この事は協会に
報告するからな!!」

※ ※ ※

トン、と音がしてアメリヤの靴底が地面に
着いた。
アメリヤの目の前には自宅の扉があった。
まだ心臓がバクバク音を立てている。
心臓の音で追手に居場所がばれるのではないか
と思うと余計激しく鳴ってしまいそうになる。
身をかがめて周囲に視線を走らせたが誰も
いないようだ。
逃げる先が思いつかなくて自宅にして
しまった。
自宅は間違いなく協会の追手が来るだろう。
必要な物だけ持って早くここを後に
しなければ。

アメリヤは大きく息を吸ってドアの取手を
引いた。
中に入りドアを閉め、明かりもつけずに
食料や衣類などを鞄に詰め込む。
荷づくりをしながら必死に何処へ逃げれば
いいか考える。

レンドアとか?港町で人の出入りが激しいから
新しく人が来ても町の人達そんなに気に
留めなさそう……。
それかグランゼドーラとか。
あれ程大きな町なら人が1人増えた所で
目立たなさそう。
よし、グランゼドーラにしよう。
行き先を決めてドアを開ける。

「おや、何処へ行くんだい」

「ひっ」

なんと師匠が家の前に立っていた。まさか
協会から連絡を受けて私を捕まえに来たのか?

「あんたが帰って来たかと思ったら電気も
つけずに家の中でゴソゴソやってるから、
もしや泥棒かと思って見に来たのさ」

アメリヤは師匠が追手ではないと分かり
ホッとした。

「でもなんだか様子が変だね。どうした
んだい」

アメリヤは事情を説明した。

「それは……。あんたのデスマスターの
師匠であるあたしは責任持ってあんたを
協会に突き出すべきなんだろうけど。
まあ父親と話す時間くらい与えてあげよう
じゃないか。それで、何処へ行こうとしてた
んだい」

「大きい町が良いかなと思って
グランゼドーラに」

「ふうん。それよりはグレン城下町の方が
人が多くて良いんじゃないのかい?
よし決めた。あんただけじゃすぐ
捕まっちまいそうだからあたしもついて
行ってやるよ」

「そんな!師匠を巻き込む訳には!」

「違う。あんたが変な事しないように見張る
だけさ。変な事しようとしたらすぐに協会に
突き出すからね」

「いや、でも」

「つべこべ言わない!ほら、早くしないと
追手が来ちまうよ!さあ早く!」

「は、はい師匠」

アメリヤと師匠はグレン城下町へ
ルーラストーンで飛んだ。

言われてみれば確かに、グレン城下町は
真っ直ぐ歩く事も出来ない程人で溢れていて、
隠れるにはうってつけかもしれない。
アメリヤは師匠に
「父さんの話を聞きたいんです」
と言って酒場へ向かった。

「あんたの父親は今何処にいるんだい」

「あの、この中に」

と言ってアメリヤはペンダントを師匠に
見せた。

「父さん、こちらの方は私のデスマスターの
師匠です」

ペンダントから男性の声がする。

「初めまして。アメリヤがお世話になった
ようで」

「初めましてバーンさん。アメリヤの師匠の
キルカだ」

「キルカさん……あの、厄介な事に巻き込んで
しまってすみません。今帰って頂いても全く
構いませんので」

「父さん、父さんの心残りでもある書の行方を
探しましょう。何か手掛かりは
ありませんか?」

「う〜ん……、襲われたのがトポルの村の近く
だったからあるとしたらやはり魔界
なんじゃないか。賊に扱える様なシロモノ
じゃないからきっとゼクレス辺りの魔術師に
売り付けたんじゃないかな」

「なるほど。ちなみに、その書は一体
どういうものなんです?」

「それを知ってしまったらもう後に引けなく
なるが、覚悟はいいか?」

アメリヤは頷き、キルカは「ああ」と
返事をした。
ふたりの反応を見てバーンは溜め息をついた。

「ああ……。俺はあの日、家族を
巻き込まない為に家を出たのに結局……。
分かった。少し長くなるが聞いてくれるか」

何から話そうか……。少し考えてからバーンは
話し始めた。

「俺は生前、デスマスターだった。ある日、
こんな噂を聞いた。
デスマスター協会の会長のアモンズが
命の書で死神の子を生き返らせ、人間を
滅ぼそうとしている』と」

「!?」

「こっそり会長室に忍び込んだ俺は、
その噂が事実だと確信し、会長室にあった
命の書を持ち出し処分しようとした。
だが何で出来ているのか書は燃やす事も
破く事も出来ず、有名な魔術師を転々と
していた所、賊に襲われてしまったんだ」

「そんな……」

「なるほどねえ。とんでもない話を
聞かされちまったね。
とりあえず、ゼクレスの金持ちの魔術師達に
あたってみようかね」

「ありがとうございます、師匠」

「それじゃお会計してさっさと向かおうか」

※ ※ ※

その頃、クルコス村のアメリヤの自宅では。

「チッ。もう出た後かそれとも自宅には
戻らねーつもりか」

アメリヤの違反を協会に報告した際、
同期である為他の者よりアメリヤに詳しい
だろうという理由でそのまま捕縛を
命じられたフーガが待ち伏せしていた。

「やれやれ、他を探すか。
父親連れてどこほっつき歩ってんだか」

※ ※ ※

キルカのアビスジュエルで2人はゼクレスに着いた。
デスマスターは魔界からの依頼も度々あるので
魔界に来る事自体には抵抗はないが、
それでもゼクレスは他と違いかなり排他的な
空気があり居心地の悪さを感じさせられる。
魔術士程ではないがデスマスターも一応
それなりの地位を認められているので
魔物や下等魔族よりはマシなのだろうが。

「ちょいと郵便局へ寄っても良いかい?
あんたを1人前のデスマスターに育てた後
また弟子をとっていてね。何も言わずに
出てきちまったから心配してるかもしれん。
便りを出しておきたい」

「それは申し訳ないです!すみません師匠!
あの、1人でも大丈夫ですから。お戻り
頂いても」

「もう後には引けないんじゃなかったかね?」

「あうう……。そうでしたね。では外で待って
ますので」

アメリヤが外で師匠を待っていると、
郵便局からとんでもない速さでドラキーマ
飛んでいった。

あれは師匠が出した便りだろうか?
特急の便り……?
本当にお帰り頂かないで平気なのだろうか。
戻って来た師匠にもう一度確認する。

「先程の特急の便りは師匠が出されたもの
ですか?お弟子さん、大丈夫ですか?
あの、私だけで何とかしますから。
気になさらずお帰り下さい」

「はっはっはっ。だーいじょうぶだよ!
心配性だねえ。特急の便りはあたしのじゃ
ないよ。あたしは弟子に数日分の課題を
言いつけただけさ。さぼったらすぐ分かる
ようなとびきり手間のかかるやつをね!」

「そ、そうですか」

そう言えば私も、師匠が用事で数日空ける時、
とんでもなくやっかいな課題を
出されたような……。

「さあて、どこから訪ねようか。賊と取引する
くらいだからキナ臭い奴にあたっていくかね。
いいかい、おどおどするんじゃないよ。
隙を見せないように。視線をそらすな」

「はい!」

「ついておいで」

そういうとキルカはゼクレス城に近い
立派な噴水のある貴族の豪邸へ向かった。
よそから来たふたりへ豪邸の周りでたむろ
す貴族らしき魔族達から冷ややかな視線を
そそがれる。
目が、言っている。
そこはお前らのようなみすぼらしいねずみが
近付いて良い場所じゃないぞと。
アメリヤは「師匠……」と声をかけたいのを
我慢した。

「ここ15、6年の間に妖しげな書を賊から
購入していないか?」

キルカは豪邸の前にいる従者と思われる魔族に
単刀直入に訊ねた。

「……どちら様ですか?」

デスマスター協会の者だ。とある危険な
書物を探している」

デスマスターの証を見せながらキルカは
答えた。

「私の知る限り無いですね。リンベリィ様は
宝石や絵画にしか興味がありませんし。それに
高貴なお方ですから賊から購入なさるなんて
考えられません」

「なるほど。ご協力感謝する」

キルカは次に、そこから少し歩いて町の外れの
屋敷へ向かった。
明かりがついていないし雑草が伸び放題だし
しばらく誰も足を踏み入れていないようだ。

「人の気配がありませんね」

「そのようだ」

「中に入って書を探しますか?」

「いや、やめておこう。侵入者への
まじないが施されている。他をあたって
見つからなかったらまた来ればいい。
それにしても優等生のお前がそんな提案を
するとはね」

「はは。そうですね。でももう色々
やらかしてしまいましたから」

「そうか。さあ次行くよ。この2軒のどっちかに
ありゃあ良かったんだけどねえ。アメリヤ、
気を抜くんじゃないよ」

「はい」

キルカはまたゼクレスの城門近くの貴族の
屋敷が建ち並ぶ通りへやって来た。
屋敷のトビラをノックする。

「どなた?」

女性の声。

デスマスター協会のキルカだ。とある危険な
書物を探している」

トビラが開かれた。

「中で話を聞きましょう。お入りなさい」

応接間に通され「どうぞおかけになって」と
促されソファに座る。

「わたくしはハドスペンと言います。
キルカさんのお探しの書とは?」

「15、6年前にトポルの村の近くで
デスマスターの男性が賊に襲われ亡くなった。
そしてその時男性が持っていた『命の書』が
盗まれた。
賊が売るとしたらトポルの村から近く
魔導国であるゼクレスの貴族だろうと思い、
ここを訪ねたという訳さ」

「なるほど〜。うちにありますよ、命の書」

「本当かい」

「欲しいんです?」

「ああ」

「3000万Gでどうでしょう」

「なんだって!?盗まれたもんだぞ!?
正当な持ち主に返すべきだろう!?」

「ええ。でしたら1割引きで
2700万Gでいかがでしょう。
わたくし、ゴールドをお支払いして
購入致しましたの。ですからあなた方も
それと同等のゴールドをわたくしに
お支払いして下さいません?」

「いくらなんでも高過ぎる!」

「ならお帰り下さい。あなた方に買って
頂かなくてもわたくしは何も損しませんもの。
貴族ってね、パーティだドレスだ食事だお酒だ
ってとっても沢山ゴールドが必要
なんですのよ。タダで貰おうなんてやっぱり
平民はいやしいのね」

「何を言っても無駄なようだね。いでよ
がいこつ!」

キルカはがいこつの攻撃対象をハドスペンに
設定した。

「きゃあ!ちょっと!人の家で何をするのよ!
あなたなんかデスマスター協会に言いつけて……
あああ、やめてやめて!誰か!助けて!
ひっ……うっ……」

アメリヤ!今の内に書を探すよ!」

「はい!父さん、命の書の見た目を教えて
下さい!」

「血のように赤くてレンガのように分厚い。
文字は血文字だ」

「この部屋には無さそうだね」

「いでよゴースト!命の書を探して!」

アメリヤに召喚されたゴースト2匹は壁や天井を
すり抜けて2階へ消えた。

アメリヤ!やるじゃないか!」

「奥様ッ!?どうしました!?」

応接間のドアノブを従者がガチャガチャと
激しく鳴らす。
ハドスペンが鍵をかけていたので開かない
ようだ。

「師匠!マズイです!ドアの前に数人いそう
です!」

「開いたら外に向かって走るよ!」

「はい!」

「開けるよ!せーの」

突然ドアが開きバランスを崩して尻餅をつく
従者。
別の従者はドアに顔面を強打したり。
キルカとアメリヤはその隙をついて屋敷の
外へ。

「このまま裏通りまで走るよ!」

「はい!」

従者達は2人のあとを追って来ないようだった。
ハドスペンがまだがいこつ達に襲われている
から助けようとしているのかもしれない。

「あとはあんたのゴースト達が命の書を
見つけて持って来てくれるといいんだけど」

「……ですね。はあ、はあ……師匠、全然息切れて
ないじゃないですか」

「そりゃあんたとは鍛え方が違うからね」

「はあ、はあ、流石師匠……。あ、ゴースト、
来ました」

アメリヤはゴーストから命の書を受け取った。

「これが命の書……?父さん、間違いない
ですか?」

「ああ、間違いない。あ」

「どうしました父さん?……あ、やばいです
師匠!あそこにいるオーガ、私の追手
なんです!」

「そうかい」

デスマスター協会のアメリヤと同期のオーガの
青年、フーガがこちらに向かって真っ直ぐ
歩いてくる。
キルカはアメリヤが首から下げている、
アメリヤの父の霊魂が入ったペンダントを
握りしめた。

「師匠!?逃げましょう!!あの、あの……?え?」

「やーーーっと見つけたぜ、アメリヤ。
さあ、大人しくデスマスター協会戻んぞ」

キルカにペンダントを握られていては
ルーラストーンも使えない。

「師匠!手を離して下さい!」

「正当な持ち主に返すべきだろう?」

「え……?それはどういう」

「すまない」

キルカはアビスジュエルを掲げた。

 ※ ※ ※

キルカのアビスジュエルによってアメリヤと
フーガも魔界を出、アストルティアにある
デスマスター協会の前にいた。

「キルカさんが特急のドラキーマで教えて
くれたお陰でアメリヤを捕まえられました。
ありがとうございます」

「!?」

「礼はいい。あたしは会長に命の書を渡しに
行く。アメリヤを任せていいかい?」

「俺もアメリヤを捕まえた報告を会長に
しなきゃっす」

「なら一緒に行くか。フーガ、ネックレスを
離すな。アメリヤは父親を置いては逃げない
だろう。ネックレスを掴んでおけば大丈夫だ」

「了解っす」

デスマスター協会の建物の中に入り階段を
のぼり3人は会長室の前についた。
キルカが会長室のドアをノックする。

「誰かな」

中から会長のアモンズの声がする。

「キルカとフーガだ。命の書を持って来た。
アメリヤもいる」

「入りなさい」

会長室の壁は埃っぽい本が詰まった棚で
覆われていた。部屋の奥に高級そうな
書き物机と革張りの椅子。手前にソファ2つと
テーブルがある。

「フーガよ。違反者アメリヤをよく連れて
来てくれたな。御苦労だった。今日は
ゆっくり休んで明日から通常の任務に
戻りなさい。下がって良いぞ」

「はい。あ、あの、離して良いんすか?
コイツ、逃げないっすか?」

「キルカより話は聞いている。この状況なら
逃げまい」

「はい!失礼しました!」

フーガが部屋を出ていく。

「さあ、書を」

アモンズはキルカから命の書を受け取ると、
表紙と裏表紙をじっくり眺め、ぱらぱらと
ページをめくり中身を確認した。

「ふは、ふはははははっ!分かる、理解
出来るぞっ!書が奪われてからも研究を
続けていた甲斐があった。今の私になら
蘇らせられるっ!」

「本当か!?それじゃ約束通りあたしの
息子も生き返してくれるんだろう!?」

「くくくくく……。くくく……。
はっはっはっはっは。キルカよ、
御苦労だったなぁ!よく書を取り戻して
くれた!だがな、命の書で蘇らせられるのは
死神の子だけだ」

「騙しやがったね!命の書を持って来れば
息子に、アドニスにまた会わせてやるって
言ったじゃないか!」

「はははは!それはな、死神の子が人間を
滅ぼしお前も天国に送ってやるから息子に
会えるって意味さ!」

「この人でなしが!あたしがあんたを地獄に
送ってやるよ!」

「会長である私にお前がかなうかな?」

「やってみなきゃ分からないだろ!?」

キルカはアモンズに向かって飛びかかり
鎌を振り上げた。
アモンズは笑みを浮かべている。

「魂狩り!」

「ハデスの宴」

「ぐあッ……!」

アモンズの闇攻撃でキルカは吹っ飛んだ。

「師匠!」

「くそっ!いでよがいこつ!」

「ふふっ。冥王のかま」

グワシャアッ!

「グ、アァァア……」

「なっ!?」

なんと、アモンズはキルカの召喚した
がいこつを一撃で倒してしまった。

「そんな」

マヒャデドス!」

大きな氷柱がキルカに降り注ぐ。

「がはっ」

「師匠っ!!」

まさか、師匠ほどのデスマスターがまるで
歯が立たないとは。
アメリヤはキルカに駆け寄った。

「師匠!師匠!」

「があっはっはっはっ。もう終わりか。
つまらん」

「師匠!」

「アメ……リヤ、すま…かった」

「師匠、良いですよもう」

アドニス…また……会える…言わ…て」

「師匠、後で聞きますから、今は……」

「どう……も……会いた…った」

「師匠!デスマスターなんだから
死なないで下さいよ!お願いします」

「……」

「嘘だよ、こんな……」

「……」

アメリヤ、父さんを召喚してくれないか」

「父さん?」

サクリファイスしてくれ。あいつを倒す」

「そんな事」

「あいつを止めるんだ。頼む。アモンズは
死神の子を蘇らせて人間を滅ぼそうと
している」

アモンズは命の書を片手に魔法陣を描いて
いる。恐らく蘇生の準備をしているのだろう。

「嫌」

「お前を守りたい。父さんはもう死んで
いるんだ。これで良いんだ」

「良くない」

「霊魂が地上に長居すると悪霊になる。
お前もデスマスターなんだから分かるだろう?
父さんもそろそろ限界だ。なあ、アメリヤ」

「う……あああああっ」

「こんな事させてごめんな。お前に会えて
嬉しかったぞ。ありがとう」

「死霊召喚!サクリファイス!」

アメリヤはバーンを召喚使役し、爆発を
命じた。

「ふ……悪あがきか。無駄な事よ。いでよ
よろいのきし!死霊の守り!」

バーンのサクリファイス。魂を糧にした
大爆発が起こる。
しかしアモンズはよろいのきしに
ガードされてほとんど無傷だった。

「あぁ」

アメリヤはその場に座り込んだ。
もう立っている気力が無かった。

「ふふはははは。大人しくそこで死神の子が
蘇る様を見ているがいい。
お前では私に勝てない。それが賢い判断だ」

「どう、して人間を滅ぼそうとするの」

デスマスターにとって死者の国が
どれだけ素晴らしい事か分からんのか?
全員、この私の言う事を聞くだろう」

「あなたの家族とか大事な人も、あなた自身も
死んでしまうんでしょう?それでもいいの?」

「はっはっは。私は未練など無いぞ。
人間を滅ぼせるのならな。
人間はこの世で最も醜く愚かな生き物だ。
家族や大事な人だと?おらんよ。
とっくの昔に人間に殺されたんだからな」

「全ての人間があなたの家族を殺した訳じゃ
ないでしょ?」

「ふん。人間は皆同罪だ。
私の家族や大事な人は、60年前のある日、
洪水で死んだんだ」

「人間のせいじゃないじゃない」

「はっ。洪水が起こるのは人間のせいさ。
欲深い人間が木を切り大地や海や空を汚すから
起きるんだ」

「レンジャーが木を植えて森を育て自然を
守ってる。良い人間もいる」

「欲深い人間を止める事が出来ないなら
同罪だ。レンジャー達がいくらあいつらに
言っても聞きゃあしない。聞かないなら
消してしまった方が早いだろう?」

「でも、全員滅ぼすなんておかしい。
皆頑張って生きてる。醜くても愚かでも必死で
生きてる」

「この星にとって人間なんか生きてるだけで
迷惑だ」

「誰にも迷惑かけずに生きるなんて無理よ」

「手遅れになってもいいのか」

「運命だと思って受け入れる」

「どこまでも自己中だな!」

「自己中で良いじゃない。それが生きるって
事よ」

「自分さえ良ければ他人はどうなっても
いいのか」

「誰かがすごく不幸だったらそれはいずれ
自分にも回ってくると思う。
まさに今のようにね!だからその人が
自分の手に届く場所にいるなら助ける」

「やはりどこまでも自分、自分、
自分第一じゃないか!愚か愚か愚か!
滅びてしまえ!」

「だって自分の事を幸せに出来るのは自分
でしょ。
皆自分で自分の事を幸せにすればいい」

「それなら他人なんかいらなくて自分1人
いればいいのか?」

「1人では生きていけないし寂しいわよ。
その服は誰が縫ったの?デザインは誰が?
誰が運んで誰が店に並べたの?材料は誰が
用意したの?この建物は誰が建てたの?
このソファは誰が作ったの?テーブルは?
この本は誰が書いたの?誰が印刷したの?」

「他人が必要というならなぜ私の家族や
大事な人は命を奪われたのだ?」

「今のあなたのように、他人の価値や尊さを
理解しようとせず、不要な物として扱った
んじゃない?」

「今の私、だと?あいつらと私が同じ?
ふざけるな!もういい!
どうせ死神の子が蘇ればお前だって
人間の汚さを見せつけられて嫌になるだろう。
死神の子が自害すると全ての人間が滅ぶ。
その呪いを知った人間は、死神の子が
自害する前に自分達の手で殺そうとする
だろう。誰からも命を狙われる世界で
死神の子が生きる事を諦めないと思うか?」

「それなら私が死神の子を護る」

「はははは。言うだけなら簡単だな。
お前が絶望する時を地獄から見ててやる。
さあ、時は満ちた。
死神の子、アウグステスよ!我が命を捧ぐ。
蘇りたまえ、現世に。
そして愚かな人間どもを滅ぼしたまえ!」

空が暗くなり雷鳴が轟きだした。
部屋が一瞬真っ白になった。
ドガゴォン、と背筋がふるいあがる、
耳が割れるような音がした。
同時にゴンゴンゴンと地面が揺れた。
アメリヤが目を開けると、アモンズが
炎に包まれていた。

「ぅあ、ああああああッ」

アモンズは真っ黒になった手と足をばたつかせ
倒れた。
アメリヤはあまりの恐ろしさに壁に
背がつくまで後退りした。
鼻に人間の髪や肉の焼けた臭いが
纏わりついた。

「ひっ、や、うう、ああぅ」

手足がぶるぶる震え、涙が止まらない。
涙で床に大きな水溜りが出来た頃、
ようやく火が消え、人型の黒い塊が残った。
どこからかびゅうっと風が吹き、
黒い塊からすすが舞い上がった。
いや違う。
人型が起き上がりすすが剥がれ落ちていく。
そして

「初めまして。僕は死神の子、アウグステス。君は?」

白髪赤眼の少年がアメリヤの前に立って
いた。

とある天才占い師の苦悩

ドラゴンクエストXのお話。
※ネタバレはありません。

昔々、とは言えない
わりと最近のお話。
あるところに
当たると評判の占い師がいました。

その占い師に占ってもらうと
今日のラッキーカラーのような些細なものから
探し物や将来への不安、恋愛の悩みなどを
ズバッと言い当て見事解決へ導くのだそうです。

ある日、噂を聞きつけた迷えるエルフの少女が
占い師のもとを訪れました。

「今度、大事な試験があるんです。
教科書を暗記するほど勉強したのに
試験の日が近付くにつれ
不合格になる悪夢にうなされるように
なりました。
私はどうしても受からなければ
いけないんです!
父が病気になって働けなくなってしまって
母だけでは生活費や父の治療費が
賄えないんです。
試験に合格し早く一人前に
ならなければなりません。
どうか助けて下さい!
お願いします!」

「なるほど。お名前を伺ってもよろしいですか?」

「ああ、失礼しました。シラフジと申します」

「シラフジさん、ですね。では占ってみましょう。少々お待ち下さい」

占い師は水晶に両手をかざし魔力を送った。水晶がうっすら青い光を帯び、それが段々強く白い光へと変わる。何かが水晶に映されているようだがシラフジには分からなかった。占い師が水晶へさらに魔力を送るとカサカサカサっという音が聴こえ、続いて女性の悲鳴が聴こえた。

「ひっ」

シラフジは悲鳴に驚き後退りをした。
占い師はしばらく水晶を覗きながら考え込んでいるようだった。
魔力が途絶え水晶は緩やかに沈黙した。
占い師はシラフジの目を見つめ結果を伝えた。

「実技の試験中にあなたの大嫌いな蜘蛛が
突然現れる、と占いの結果が出ました。
たとえ現れても、落ち着いて試験を
続行出来れば合格出来る事でしょう」

「先程の悲鳴はもしかして私の……?未来が視えるのですか!?占い師様、あなたのお名前を教えて下さい!」

「ソレロでございます」

「ソレロ様!ありがとうございました!」

占い小屋を出ていくシラフジの小さな背を見送り、ソレロは呟いた。

「名前……訊かれたの、初めてですね……」

数週間後、シラフジは再びソレロの元を訪れた。

「あの……ッ!ソレロ様の仰った通り!試験中に蜘蛛が出たんですよ!!私、ほんと〜にほんと〜に蜘蛛が苦手で!ソレロ様から聞いてなかったら試験会場からキメラのつばさを使って逃げ出してしまっていたかもしれません。そうなれば間違いなく不合格になっていたでしょう。本当に……ありがとうございました!!ソレロ様のお陰で無事に試験に合格出来ました!」

その後もシラフジは度々ソレロの占い小屋へやって来た。心配事を占って貰ったり、結果を報告し感謝を伝えに来たり。

次第にソレロにとある気持ちが芽生えていた。
ソレロは気付いた。
ソレロはシラフジに恋をしていた。
ソレロの事を疑わず、真っ直ぐな心でソレロの占いの結果を受け取り、そして感謝をしてくれるシラフジというエルフの少女にソレロはいつしか惹かれていたのだった。

ある日、シラフジが恋愛について
占って欲しいと言った。

ソレロは
「あなたの運命の相手は私であり、
私と結ばれれば幸せになれるでしょう」
と言おうとしてやめた。

自分に陶酔しているシラフジの事だから
こんな胡散臭い嘘をついても
きっと信じてしまう。

ソレロは立ち上がって背を向け

「今日は具合が悪いのでまた今度いらして下さい」

と言い、その後二度と姿を見せなかったという。

クリスマス、少年の目には涙が溢れ

ポケモンSVのお話。※ネタバレはありません。

 

オレンジアカデミーのとある教室の休み時間。

 

「オレこんどサンタさんにパモのぬいぐるみおねがいするんだ!ペパー、おまえは?」

 

キラキラと目を輝かせ鼻息荒く、クラスメイトの男の子はペパーに訊ねた。

 

「……。

おまえまだサンタクロースしんじてんのか?あれほんとはおまえのとうちゃんとかあちゃんなんだぜ」

 

「えっ。ウソだよ!サンタさんいるもん!!うわあああああん!!!!」

 

ペパーの言葉に男の子はその階中に聞こえるような大きな声で泣きだしてしまった。

 

「ペパーくん」

 

担任の先生がかたく静かな声で呼んだ。

 

「ちょっとこちらへ来なさい」

 

「はい……」

 

 ※ ※ ※

 

あの後、先生から「本当の事でも相手の気持ちを考えて言わないようにした方がいい場合もあるから気を付けなさい」と注意された。

 

「でもさ……」

 

ペパーは寮の自室のベッドに仰向けに倒れ込んだ。

 

「オレのきもちはどうでもいいちゃんなのか?オレのところにはすうねんまえからサンタクロース(とうちゃんかあちゃん)こないんだぜ」

 

ペパーが鼻をすする音を聞き、側にいたオラチフが顔を覗き込むと、ペパーの目からは涙が溢れていた。驚いたオラチフは、大好きな、小さくて可愛いご主人様の涙を止めようと必死に甜めた。

 

「オラチフ……」

 

その夜、ペパーはオラチフを抱きしめながら泣き疲れて眠りについた。

 

 ※ ※ ※ 

 

「休暇が欲しいだと!?この忙しい時に何寝ぼけた事を言っている!?」

 

雑然とした研究室にペパーの母、オーリム博士のイライラした声が響いた。オーリムの目の前に立っている、オーリムと同じく白衣を着た男性が恐縮しながら言った。

 

「すみません……。ですが、息子はまだ小さいですし、家族皆でクリスマスを過ごしたいのです」

 

「我々にそんな暇など存在しない。年明けの成果発表会で研究の成果を示せなければスポンサー契約を切られる。資金が絶たれればこの研究は続行出来ない。分かっているのか!?おまけに最近立て続けに人が辞めて人手不足なんだぞ」

 

「分かりました。無理ならいいです。辞めます。私はもうこれ以上あなたにはついていけません」

 

「な……ッ!?」

 

オーリムが止める間も無く男性は白衣を投げ捨て出て行ってしまった。

 

「ああ……これで今月何人目だ……?あと少しだというのにこれでは間に合わない……。」

 

力無く椅子に腰を下ろし頭に手をやる。

 

「何がクリスマスだ……。ん……?クリスマス……?息子……」

 

オーリムの目がホワイトボードの片隅に貼られた写真へ向けられた。

 

「……」

 

―願わくば、オーリムがペパーと一緒にクリスマスを過ごさん事を……。どうか、せめてプレゼントだけでも……。だが悲しいかな、彼女は恐らく……。

 

クリスマス、少年の目には涙が溢れ END

またあいたくて

ドラゴンクエストXのお話。
※バージョン4が終わった直後の
主人公のお話。
※バージョン4のネタバレがあります。

※  ※  ※  

「おめでとうございます!
すごい、すごいです主人公さん。
ついに『生きる伝説』ですよ!
流石ですね!」

木工職人のギルドマスターのカンナは
そう言って主人公を褒め称えた。

「……はは」

対する主人公の反応は、
「今日も地球が自転してますね」
とでも言われたかのように薄かった。

「えーと……、もしかして主人公さん、
お疲れです?それともどこか身体の具合が
悪いんですか?」

「あー……ううん、何でもないですよ」

「あっ、そうですか……。
無理はなさらないで下さいね。
主人公さんに憧れて木工始めて下さる方も最近多くて。
本当に主人公さんには感謝しかないですよ。
これからも一緒に頑張りましょうね!」

「はい」

カンナを心配させないようにと
無理矢理笑顔を作ってその場を後にした。

ルーラストーンで自宅に帰る。
ひとりになり、溜息をつく。

「……何が『生きる伝説』、だ」

そんな大層な称号を貰ったって
自分には父親もいとこも世界も
護れないのだ。
……大切な相棒も。

結局、相棒が自身の消失と引き換えに
世界を元通りに再生しただけだ。

「お前にまた、あいたいよ……」

ベッドに突っ伏しあの小さな相棒の事を
思い出すと涙が溢れた。

「キュル、ル……」

その日、夢をみた。

主人公が眠っていると突然ゴツン、と
頭に何かが当たった。
驚いて飛び起きると目の前にキュルルがいた。

「主人公!いつになったら
お礼のチョコレートくれるキュ!?」

「え!?だってそれは、
キュルルがいなくなっちゃったから
渡せな……」

「何を言ってるキュ!ずっと側にいたキュ!」

「いやそんなはずは」

「言い訳は聞きたくないキュ!」

そう言うとキュルルは勢い良く飛んで
近くにあった木材に吸い込まれるように
消えた。

「ああ!」

叫びながら主人公は目を覚ました。

「ああ……。ああ、そうか。
俺は生きる伝説の木工職人……。
俺の手で、キュルルを作ろう」

主人公は家にあった木材を
手にして見つめた。

「また、お前にあえるかな」

さよなら。

ポケモンレジェンズアルセウスの主人公とテルくんのお話。
※主人公は「ユニ」という名前の女の子です。
※ネタバレはなるべくないようにしましたがウォロについてふわっとありますので御注意下さいm(_ _)m


ユニは格好良い。

おれなんか、たった一度、でんきショックで気絶させられただけでポケモンの前に立つと足が震えるのに。

ユニだって何度もポケモンに襲われて、気を失った事も沢山あるのに、全然怖がらずにポケモンに立ち向かう。

ポケモンと対等、なんだろうな。

でもそんな大胆不敵なユニがもじもじしているというか、目で追ってるのに視線が合いそうになると慌ててそらす人がいる。
おれや博士の前ではハキハキ喋ってるのにその人の前だと大人しいっていうか、全く喋らなくなる。
もしかして……。

「ユニってウォロさんの事好きなの?」

あ、やべ。言っちゃった。
ま、まあ、ユニだったら適当にはぐらかしてくるだr

「……きじゃない」

「え?」

ユニの強く握った両のこぶしが白く震えている。

「あんな人の事なんか好きじゃないッ!!」

突然の激昂。
目には涙が光っている。

「あ、ぅぇ、へ、変な事訊いてごめんな!えっと……お詫びにこれやるよ!おまえ、猫好きだろ?」

テルはもくざいを彫って作った猫の箸置きをユニに差し出した。

「ああーっ!そう言えばおれ、博士からおつかい頼まれてたわ!ごめん、またな」

ユニがありがとうとお礼を言う前にテルはその場から逃げだした。

ユニ、ウォロさんの事嫌いじゃなさそうだったのにな。泣いて怒るなんてよっぽど嫌いだったのかな。女の子って難しいな。
という話を髪結いのヒナツに話してみた。

「それはもしかして……。ユニさん、テルさんの事が好きだったのでは?」

「は……?!え"ッ!?!」

トマトみたいに真っ赤になるテル。

「そ、そそそそそそそんな、まさか」

「きっと、好きな人であるテルさんから違う人が好きなのかって訊かれたから怒ったんじゃないでしょうか?」

「え"え"え"え"ッ!??」

その後のテルの耳には何も入らず。
放心してふらふら歩いていたら誰かとぶつかって倒れてしまった。

「いて!ああ、すみません!うわッ!?」

なんとぶつかった相手はユニその人であった。

「ああああ、さっきはごめんな!あ、あのさ……」

恐らくテルの顔は真っ赤だが、夕陽に紛れて気付かれなさそうだ。

「ユニの事、好きだ。おれの恋人になって下さい」

うわあまた!おれの口が勝手に!

「えっ……」

驚くユニ。
ユニの好きだった人は……。

 ※ ※ ※

「ユニってウォロさんの事好きなの?」

私は、ウォロさんが、好きだった。
あの日、あの時までは。

まるでギリシャ神話から抜け出してきたかのように美しい彼は、時空の裂け目から落ちてきた私の事を変な奴とか気味が悪い奴とか言わないで普通に接してくれた。
とても物知りでこの世界の事を沢山教えてくれた。
ムラから追い出され打ちひしがれていた私を安全な場所に匿ってくれた。

私にとって天使と同等であった彼は、あの日、あの時、裏返って悪魔になった。
彼は最初から、私の事を利用するつもりで近付いた。

彼は私の事なんてまるで好きなんかじゃなかった。

アルセウスの言葉を授かった私の事が憎くて憎くて堪らなかったそうだ。
私は、彼に憎まれているなんて全く気付いてなかった……。

絶望して泣く事すら許されず、死んだ心のまま私は彼のポケモンと戦った。
……彼は私の前から去った。

 ※ ※ ※

「ユニの事、好きだ。おれの恋人になって下さい」

ユニは泣きながら頷いた。

「ははっ、駄目だよな。急に変な事言ってごめん。忘れて……えっ!まじ!?いいの!?」

……あの人の事はもう、忘れよう。

さようなら、ウォロさん。
側にいたのに、あなたの辛さに気付けなくてごめんなさい。
沢山助けてくれてありがとうございました。
どうか、お元気で……。