色々お話置き場

ドラクエ10、ゼルダ、ポケモン

またあいたくて

ドラゴンクエストXのお話。
※バージョン4が終わった直後の
主人公のお話。
※バージョン4のネタバレがあります。

※  ※  ※  

「おめでとうございます!
すごい、すごいです主人公さん。
ついに『生きる伝説』ですよ!
流石ですね!」

木工職人のギルドマスターのカンナは
そう言って主人公を褒め称えた。

「……はは」

対する主人公の反応は、
「今日も地球が自転してますね」
とでも言われたかのように薄かった。

「えーと……、もしかして主人公さん、
お疲れです?それともどこか身体の具合が
悪いんですか?」

「あー……ううん、何でもないですよ」

「あっ、そうですか……。
無理はなさらないで下さいね。
主人公さんに憧れて木工始めて下さる方も最近多くて。
本当に主人公さんには感謝しかないですよ。
これからも一緒に頑張りましょうね!」

「はい」

カンナを心配させないようにと
無理矢理笑顔を作ってその場を後にした。

ルーラストーンで自宅に帰る。
ひとりになり、溜息をつく。

「……何が『生きる伝説』、だ」

そんな大層な称号を貰ったって
自分には父親もいとこも世界も
護れないのだ。
……大切な相棒も。

結局、相棒が自身の消失と引き換えに
世界を元通りに再生しただけだ。

「お前にまた、あいたいよ……」

ベッドに突っ伏しあの小さな相棒の事を
思い出すと涙が溢れた。

「キュル、ル……」

その日、夢をみた。

主人公が眠っていると突然ゴツン、と
頭に何かが当たった。
驚いて飛び起きると目の前にキュルルがいた。

「主人公!いつになったら
お礼のチョコレートくれるキュ!?」

「え!?だってそれは、
キュルルがいなくなっちゃったから
渡せな……」

「何を言ってるキュ!ずっと側にいたキュ!」

「いやそんなはずは」

「言い訳は聞きたくないキュ!」

そう言うとキュルルは勢い良く飛んで
近くにあった木材に吸い込まれるように
消えた。

「ああ!」

叫びながら主人公は目を覚ました。

「ああ……。ああ、そうか。
俺は生きる伝説の木工職人……。
俺の手で、キュルルを作ろう」

主人公は家にあった木材を
手にして見つめた。

「また、お前にあえるかな」