色々お話置き場

ドラクエ10、ゼルダ、ポケモン

さよなら。

ポケモンレジェンズアルセウスの主人公とテルくんのお話。
※主人公は「ユニ」という名前の女の子です。
※ネタバレはなるべくないようにしましたがウォロについてふわっとありますので御注意下さいm(_ _)m


ユニは格好良い。

おれなんか、たった一度、でんきショックで気絶させられただけでポケモンの前に立つと足が震えるのに。

ユニだって何度もポケモンに襲われて、気を失った事も沢山あるのに、全然怖がらずにポケモンに立ち向かう。

ポケモンと対等、なんだろうな。

でもそんな大胆不敵なユニがもじもじしているというか、目で追ってるのに視線が合いそうになると慌ててそらす人がいる。
おれや博士の前ではハキハキ喋ってるのにその人の前だと大人しいっていうか、全く喋らなくなる。
もしかして……。

「ユニってウォロさんの事好きなの?」

あ、やべ。言っちゃった。
ま、まあ、ユニだったら適当にはぐらかしてくるだr

「……きじゃない」

「え?」

ユニの強く握った両のこぶしが白く震えている。

「あんな人の事なんか好きじゃないッ!!」

突然の激昂。
目には涙が光っている。

「あ、ぅぇ、へ、変な事訊いてごめんな!えっと……お詫びにこれやるよ!おまえ、猫好きだろ?」

テルはもくざいを彫って作った猫の箸置きをユニに差し出した。

「ああーっ!そう言えばおれ、博士からおつかい頼まれてたわ!ごめん、またな」

ユニがありがとうとお礼を言う前にテルはその場から逃げだした。

ユニ、ウォロさんの事嫌いじゃなさそうだったのにな。泣いて怒るなんてよっぽど嫌いだったのかな。女の子って難しいな。
という話を髪結いのヒナツに話してみた。

「それはもしかして……。ユニさん、テルさんの事が好きだったのでは?」

「は……?!え"ッ!?!」

トマトみたいに真っ赤になるテル。

「そ、そそそそそそそんな、まさか」

「きっと、好きな人であるテルさんから違う人が好きなのかって訊かれたから怒ったんじゃないでしょうか?」

「え"え"え"え"ッ!??」

その後のテルの耳には何も入らず。
放心してふらふら歩いていたら誰かとぶつかって倒れてしまった。

「いて!ああ、すみません!うわッ!?」

なんとぶつかった相手はユニその人であった。

「ああああ、さっきはごめんな!あ、あのさ……」

恐らくテルの顔は真っ赤だが、夕陽に紛れて気付かれなさそうだ。

「ユニの事、好きだ。おれの恋人になって下さい」

うわあまた!おれの口が勝手に!

「えっ……」

驚くユニ。
ユニの好きだった人は……。

 ※ ※ ※

「ユニってウォロさんの事好きなの?」

私は、ウォロさんが、好きだった。
あの日、あの時までは。

まるでギリシャ神話から抜け出してきたかのように美しい彼は、時空の裂け目から落ちてきた私の事を変な奴とか気味が悪い奴とか言わないで普通に接してくれた。
とても物知りでこの世界の事を沢山教えてくれた。
ムラから追い出され打ちひしがれていた私を安全な場所に匿ってくれた。

私にとって天使と同等であった彼は、あの日、あの時、裏返って悪魔になった。
彼は最初から、私の事を利用するつもりで近付いた。

彼は私の事なんてまるで好きなんかじゃなかった。

アルセウスの言葉を授かった私の事が憎くて憎くて堪らなかったそうだ。
私は、彼に憎まれているなんて全く気付いてなかった……。

絶望して泣く事すら許されず、死んだ心のまま私は彼のポケモンと戦った。
……彼は私の前から去った。

 ※ ※ ※

「ユニの事、好きだ。おれの恋人になって下さい」

ユニは泣きながら頷いた。

「ははっ、駄目だよな。急に変な事言ってごめん。忘れて……えっ!まじ!?いいの!?」

……あの人の事はもう、忘れよう。

さようなら、ウォロさん。
側にいたのに、あなたの辛さに気付けなくてごめんなさい。
沢山助けてくれてありがとうございました。
どうか、お元気で……。