プク姫の誕生日とオガ男のお話
※ドラゴンクエストXのお話。
※ネタバレはありません。
とある晴れた日。
1人のオーガがプク姫の家の前に立っていた。
ジドガである。
ジドガは片方の手に手紙のようなものと、もう片方の手に武骨な彼には不似合いな綺麗な包みを持っていた。
手紙はプク姫の誕生日会の招待状であり、包みは誕生日プレゼントであった。
なんとジドガはプク姫の誕生日会に招待されたのであった。いや、ただ単に毎年フレンド達にプク姫が招待状を出しているだけである。
俺だけが招待された訳じゃない……、いや、でも他の誰の姿も見えないし!もももしかして今年は俺だけかも。
そんな淡い期待はルーラで続々とやって来たプク姫の他のフレンド達によって打ち砕かれる。ジドガが早く来すぎただけなのだ。受付の1時間以上前に来たのだ彼は。
ま、そうだよな……とジドガは深々とした溜め息をついた。
かれこれ数十分、彼は家の前で悶々としていた。
この前、グランゼドーラの酒場で皆と集まった帰り、俺、なんかすんごい事してなかった?
プク姫をだ、だ、抱きしめた、ような……。夢、だった?いや、彼女の髪のシャンプーの香りも彼女の体温も生々しく覚えている……。
ふぁー!!よく通報されなかったな、俺……。
あんまり話した事もないのに……。
ていうかあの時、俺、名前呼ばれた?俺の名前、ジドガだっけ?ジドガだようんうん。
うわー!俺の名前覚えててくれたんだ!うわー!うわー!
「あの……、あなたはプク姫様の誕生日会に招待された方ですよね?そろそろお時間ですのでどうぞ中にお入り下さい」
「は、はいィッ!」
プク姫のコンシェルジュに声をかけられてやっとジドガは家の中に入った。
プク姫の家は緑いっぱいの女の子らしい可愛い家だった。
パーティ用にコンシェルジュ達が作った美味しそうな料理が部屋の真ん中のテーブルに並べられている。
「皆ありがとう〜!」
プク姫はフレンド達からのプレゼントを笑顔で受け取っていた。
ゴージャスクッキーとかアクロバットケーキなどの手作りのお菓子や、最新のボスコインであるムドーコインや、最新の装備などなど。
「くっ……」
ジドガはこの前の事を思い出すと恥ずかしくて直接渡せず、仕方なくプク姫のコンシェルジュにプレゼントを託し、よろよろとプク姫の家をあとにした。
※ ※ ※
「ふぅ……」
誕生日会が終わってくたくたのプク姫は皆を見送った後ソファに泥のように体を預けた。
「プク姫様、こちらオーガの男性の方から頂いたプレゼントです」
「ありがとー」
オーガの男性のフレンドはジドガしかいないからジドガからのプレゼントで間違いないだろう。
ジドガ、今日来てくれたんだ?全然見かけなかったけど……。
プク姫が包みを開けるとオーガサイズの大きな櫛が中から出てきた。
「あら、あらあら」
あまりの大きさに苦笑してしまう。
使えなくはないけれど、プク姫にはちょっと不釣り合いな大きさだ。
きっと不器用な性格なんだろうな。彼ならヤスラムみたいに悪い事をそそのかしてきたりしないだろう。
ジドガは腕が力強くって、心臓の音が優しくてあったかかった……。
コンシェルジュに「お風呂が沸きましたよー」と呼ばれるまでプク姫はぼーっと櫛を眺めたままだった。