色々お話置き場

ドラクエ10、ゼルダ、ポケモン

ミファーの微笑み

ゼルダの伝説ブレスオブザワイルドのミファーちゃんのお話。
※ネタバレはありません。

「ふう……」

ルッタの操縦訓練、疲れたな。
でもゾーラの里の為、ハイラルの為、リンクの為に頑張らないと。
ゾーラ族の王女にしてヴァ・ルッタの繰り手のミファーはルッタの中から出、その背の上から里を見下ろしていた。

「あっ!あれ、もしかしてリンク……?」

ゾーラの里に向かって長いもみあげの金髪の少年が歩いて来るのが見えた。
訓練の疲れも何処へやら、風のような足取りで里の入口へ向かう。

「やっぱりリンクだ。リンクー!どうしたのー?」

ミファーに訊かれ、リンクはゼルダ姫がハイラル城の兵士達の為に力の出る料理などを研究していてその素材をゾーラの里へ調達しに来たのだと説明した。

「そうなんだ。お疲れ様。あ、これが必要な素材のメモ?ガンバリガニとゴーゴーハスの実なら、確か里の祠の周りで採れると思うよ。こっちこっち」

ミファーはそう言うと里の真ん中にあるネヅ・ヨマの祠へリンクを案内した。祠は大きな水溜りの中心にあり、ゴーゴーハスがしげっている。

「ゴーゴーハスの実、これで足りる?」

リンクは頷き、ポーチに実を数個しまった。

「じゃああとガンバリガニだね。ええっと……」

薄暗いしガンバリガニはゾーラの里の建物の素材の岩と似たような色なので目立たない。
暗がりにじっと目を凝らして探す。

「いたいた……きゃっ!」

捕獲しようとしたミファーの手をガンバリガニがハサミで思いっきり挟んだ。
驚いて悲鳴をあげるミファーにリンクは慌てて駆け寄りガンバリガニを外した。

「痛かったあ……」

ハサミが外れほっとしながら右手を見ると小指に少し血が滲んでいた。
あーあ、リンクに格好悪い所見られちゃったな……。
としょんぼりするミファーの手をリンクがそっと手に取った。リンクはポーチから包帯を取り出すとミファーの小指に巻き始めた。

「えっ……?!リンク、どうして!?」

私には治癒の力が使えるのに、どうして手当てしてくれるんだろう?と不思議に思い訊ねる。
するとリンクは、いつも怪我の治療をして貰っているから、自分もミファーの怪我の手当てがしてみたかったのだと答えた。

「リンクが、私に?」

え?え?と戸惑いながらもミファーの顔は真っ赤に染まっていく。嬉しいような、恥ずかしいような気持ちで痛みなんかどこかへ行ってしまったみたい。ううん、嘘、やっぱりちょっと痛い。

「……ありがとう。あっ、私、そろそろ帰るね」

本当はリンクともっと一緒にいたいけど、顔が赤いのに気付かれたくなくて、思わずミファーは帰ると言ってしまった。
リンクはお大事に、それじゃまたとハイラル城へと帰っていった。

「ふふっ」

リンクが「また」って言ってくれた……。
リンクに「また」と言われただけで嬉しくて小躍りしたくなってしまう。
ミファーはルンルンで帰宅した。

※ ※ ※

「ミ……ミファー様!?一体どうなされたのです、その怪我は!?!」

教育係のムズリがミファーを見るなり真っ青になって叫んだ。

「これはリンクと……」

「リンクッ!?あのハイラル人の小僧ゾラ!?リンクめ、ミファー様に怪我をさせるなんて許さないゾラ!!!」

「違うのムズリ!」

あああ、そう言えばムズリはハイラル人を毛嫌いしてるんだった。なんて誤魔化そう?

「あのね、これは願い事が叶うおまじないなの。最近流行ってるんだって。リンクが教えてくれたの」

「……おまじない?」

「そう」

「なんだ心配したゾラ〜」

ふむ、ミファー様も年頃の女の子ゾラ。占いとかおまじないとかに興味を持っていてもおかしくないゾラ。

「もし願い事を叶える為にこのムズリめの力が必要でしたら遠慮なくおっしゃって下さいゾラ」

「ありがとう、ムズリ」

良かった、上手く誤魔化せたみたい。
安堵の溜め息をついてウォーターベッドに寝転び指の包帯を眺める。

リンクが私の手当てをしてくれたなんて、夢みたいで信じられないけど、こうして本当に包帯が巻いてあるんだもん、現実だよね……。
小指を抱き締めるように眠りについたミファーの口元には笑みが浮かんでいた。

その日からしばらく、嬉しげに包帯を見つめるミファーの姿が周囲の人々から目撃され、ゾーラの里の若者達の間では指に包帯を巻いて願掛けをするのが流行ったとか流行ってないとか。